設計者の声


株式会社日本設計

極上の開放感とともに箱根小涌谷を見下ろす。
「箱根小涌園 天悠」に十和田石のインフィニティバスを設計した経緯と、
そこに込められた想いをお話いただきました。

極上の開放感とともに箱根小涌谷を見下ろす。
「箱根小涌園 天悠」に十和田石のインフィニティバスを設計した経緯と、そこに込められた想いをお話いただきました。

湯船を空に溶け込ませる

露天風呂

インフィニティバスのインフィニティとは「無限」という意味です。近年、海外の高級リゾートのプールで使われ注目を浴びているスタイルで、例えば、プールの水面を水平線と平行に設計し、槽のフチから水を常時流すことで、フチを見えなくします。そうするとプールと海とが境目なく繋がっているように見えるので、“無限”の広さを感じさせる空間をつくることができます。2017年春にオープンした「箱根小涌園 天悠」ではこの手法を露天風呂に取り入れました。小涌谷の高台という立地を活かし、大自然をベースにして空と浴槽をつなげました。夜は満点の星空の下で、また、東から昇る朝日を見ながら浸かることができるインフィニティバスは、お客様から好評の声をいただいております。自然の一部と融合し、かつ、イメージした演出を可能とする材料として選んだ石が十和田石なのです。

十和田石は濡れ色を持つ石

濡れた十和田石

浴場の設計には機能的な面を考慮したいくつかのセオリーがあり、“滑らない”というのは重要項目の一つとして考えられています。凝灰岩の多孔石である十和田石は、タイルやほかの花崗岩などの自然石よりも、濡れても滑りにくいという性質は理解していましたが、大型施設での施工例は少なく、私としても採用にあたり少し不安がありました。そこで今回の設計に際し、中野産業さんの採石場を見学させてもらいました。これまで、海外の天然石の採掘場視察を行ったことはありましたが、日本の採掘場に行く機会はあまりなかったので、非常に参考になりました。現地では滑性の少なさ以外の石の性質、たとえば加工の許容性などの詳細から、安全性に対する配慮までうかがい、こちらの意図する設計との融合性を確認しました。中野産業さんの石に対する丁寧な扱いにも共感しました。
最終的には、小涌園の泉質との相性の調査も行い、採用を決定しました。
今回、「箱根小涌園 天悠」の看板施設となるインフィニティバスの設計に求められた安全性や機能性、意匠性など、そのすべての要素をクリアしてくれたのが十和田石でした。スペックはもちろんですが、十和田石の青味がかった独特の色合いは特に濡れて色味を増したとき、見事に箱根の空と自然とに調和したように感じます。

インフィニティバス

設計者の立場から
−使う側から見た十和田石−